賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

シルクロード横断:第37回 マルイ→アシハバード

 早朝のすがすがしい空気の中、トルクメニスタンのマルイの町を歩く。道路はきれいに掃き清められ、ゴミひとつ落ちていない。「さすが独裁国家!」と、感心してしまう。通る車の数はきわめて少ない。広場には噴水。幾何学模様を描きながら、勢いよく水を噴き上げている。カラクム砂漠に近い町とは思えないような光景だ。

 トルクメニスタン第2の都市マルイはイラン国境にも、アフガニスタン国境にも近い。

 ここはかつてのシルクロード要衝の地。30キロほど東には世界遺産にも登録されているメルブ遺跡がある。

 メルブ(木鹿)はシルクロードでも最大級のオアシスだった。とくにイラン、イラクを支配したトルコ系の王朝、セルジュク朝(1038~1194年)の都だった頃は空前の繁栄を謳歌した。

 だが、1221年のモンゴル軍の来襲で町はことごとく破壊され、一瞬にしてシルクロードの歴史の表舞台から消えてしまう。

 メルブは「さまよえる町」といわれるように、古い町の上に新しい町がつくられたのではなく、古い町は打ち捨てられ、それに隣接して新しい町が造られた。そのため、ここでは5つの異なった時代の町跡を見ることができるのだ。

 早朝の散歩を終えた。

 町の中心にある「イルスガルホテル」に戻り、朝食を食べ、9時出発。まずは郊外の街道沿いにあるガソリンスタンドで給油。オクタン価95のガソリンを入れたが、トルクメニスタンほどガソリンの安い国はない。世界で一番、ガソリンの安い国、それがトルクメニスタンなのだ。

 1リッターが400マナット。日本円でなんと約10円。

 闇レートで両替すれば2円ほどでしかない。ここでも、「さすが独裁国家!」と、あらためて感心してしまうのだ。

 マルイから首都のアシハバードへ。一直線の舗装路が伸びる。交通量は多くない。左手にはイランとの国境を成すコペトダグ山脈の山々が青く霞んで連なっている。右手の大平原はカラクーム砂漠につながている。

 昼食はブッシュ・ランチ。街道沿いの木陰にブルーシートを広げ、サンドイッチを食べる。食後の昼寝が最高に気持ちいい。カラクーム砂漠から吹いてくる熱風に砂漠の匂いをかぎながら眠る。15分という短い眠りで気分もさっぱり。バイク旅で一番危ないのは昼食後の睡魔だが、「15分寝」のおかげで、そのあとの単調な一本道の走行も居眠り運転することなく走ることができた。

 首都アシュハバードに近づくと、イラン国境のコペトダク山脈の山並みがはっきりと見えてくる。そして16時、マルイから368キロのアシュハバードに到着した。

 我々が泊まるのは中心街の「ニサホテル」。プールつきの高層ホテルだ。さっそく水着に着替え、プールでひと泳ぎ。泳ぎ疲れたあとはホテルの部屋から夕日を眺めた。夕日はやがてイラン国境のコペトダク山脈の向こうに落ちていく。日が山の端に沈むと、夕空は華やかな色合いに染まり、コペトダク山脈の山並みは紫色に変わった。

 夕食は高層ビルの展望レストラン。スープの「グーラッシュ」のあと、サラダ、ライスつきの魚料理と肉料理を食べた。食事しながら眺めるアシハバードの夜景はまばゆいばかり。世界でも有数の天然ガスが埋蔵するトルクメニスタンは資源景気に沸き立ち、あちらこちらで高層ビルが建られていた。

マルイの広場

マルイの広場

マルイのガソリンスタンド

マルイのガソリンスタンド

街道沿いの木陰でブッシュランチ

街道沿いの木陰でブッシュランチ

アシハバードで泊まった「ニサホテル」

アシハバードで泊まった「ニサホテル」