賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

カソリの林道紀行(27)

雪と氷の大名栗林道を行く!!

(『バックオフ』2004年4月号 所収)

「ここどこ」関東編の大名栗林道を目指して、午前9時、JR青梅線青梅駅前を出発。ブルダスト瀬戸こと『バックオフ』編集長の瀬戸雅彦さんが同行してくれる。

 ぼくのバイクはDR-Z400S、瀬戸さんはSL230。DRには「ミシュランCROSS AC10」を装着しているが、SLは標準装備のノーマルのタイヤ。ミシュランCROSSAC10で雪道をどの程度、走れるものなのか、それを試す意味もあっての雪道走行。興味津々といったところだ。

 出発してから30分後には目指す大名栗林道の入口に到着。青梅とは気温が違う。キリリッと突き刺さってくるような冷気の中を走り出す。

 ダートに入り、谷間を登っていくとアイスバーンに突入。この登り勾配のツルツル滑るアイスバーンにはまいった…。

 DR、SLともに後輪は空転し、登れない。で、1台のバイクを2人がかりで押した。ヒーヒーハーハー、苦しいのなんのって、もう口から心臓が飛び出しそうな苦しさだった。

 延々とつづいた登り坂を突破し、稜線上に出ると、雪道に変わった。アイスバーンにはまったく歯がたたなかった「CROSS AC10」だが、雪道には強さを発揮した。瀬戸さんはSLの空気圧を前後ともにかなり落として走ったが、それでもわずかな上り勾配になると走れない。だがDRは空気圧を落とすこともなく、標準の空気圧のままで雪道をかなり楽に走ってくれたのだ。

 ただ、この稜線上で要注意なのは、カチンカチンに凍りついたアイスバーン上に降り積もった雪。それに気がつかずに下ったときなどはツーッと一気に滑り、肝を冷やした。とにかく転落しないようにと最大限の注意を払った。

 大名栗林道の起点から6・9キロ走ったところで、「ここどこ」ポイントに到達。

 苦節!?1年、ついにフォレスターだ。ちょうど1年前、瀬戸さんと「ここどこ関東編」の房総半島の林道を走った。それからというもの、すっかり「ここどこ」にはまってしまった。

 今回の大名栗林道にしても、これだけのおもしろい林道があるのは、2月号の「ここどこ関東編」を見るまでは知らなかった。

 半日とか1日で、それまで知らなかった林道を走ることができ、その周辺をおもしろく見てまわれるのが「ここどこ」最大の魅力。もちろん「ここどこポイント」を探し出すおもしろさはいうまでもない。

 フォレスターになって意気揚々とさらに雪の大名栗林道を走る。

 稜線上から眺める奥武蔵の山々が印象深い。

 雪道との悪戦苦闘の連続なので、体力の消耗が激しい。腹ペコになり、雪の上に座り込み、昼食のおにぎるをむさぼり食った。が、これから先、何があるのかわからないので、おにぎりは緊急用にひとつだけ残しておいた。

 午前中は晴れていたが、午後になると天気は崩れ、小雪が散らつく。寒さも一段と厳しくなる。林道の起点から14・3キロ走ると有間林道との分岐点。

「GPSここどこ」の「ここどこポイント」は見つけ出せなかったが、残念ながらこの地点で引き返すことにした。これ以上、深追いすると危険だと判断したからだ。

 来た道を引き返す。帰路も雪と氷との闘い。アイスバーンの下りは上り以上の恐怖。我々は雪と氷の大名栗林道に立ち向かい、転倒ゼロで林道入口の名栗温泉まで戻ってくることができた。