賀曽利隆 STILL ON THE ROAD !

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。

秘湯めぐりの峠越え(28)葛葉峠

 (『アウトライダー』1995年9月号 所収)

 佐野坂峠を越えて入った白馬村から小谷村へ。そこでは体力勝負で温泉の連チャンをした。

 第1湯目は、国道のすぐわきにある下里瀬温泉「サンテインおたり」(入浴料700円)。クアハウス風の温泉だ。

 第2湯目は、下里瀬温泉の交差点を右折し、山中に5キロほど入った奉納の集落の一番奥にある奉納温泉(入浴料310円)。ひなびた山の一軒宿の温泉だ。

 第3湯目は、小谷温泉。奉納温泉からR148に戻り、新道のトンネルを抜けたところで国道を右折し、10キロほど山中に入ったところにある。昔からの湯治場で、3軒の温泉宿が固まっている温泉街を通り抜け、公営の「雨飾荘」を通り過ぎ、妙高小谷林道の入口近くにある露天風呂に行く。男女別の、樹林に囲まれた露天風呂なのだ。

「200円から500円を入れて下さい」

 と書かれた協力金箱に、よーしやと、ちょっぴり大きな気持ちになって、500円玉を入れる。500円玉を入れても、全然おしくないほどで、森林浴を楽しみながら湯につかることができた。

 第4湯目は来馬温泉。R148から300メートルほど入ったところにある一軒宿の村営「風吹荘」(入浴料300円)の湯に入る。湯から上がったところで、「風吹荘」の食堂で「天ザル」(1000円)を食べる。そばのうまさと、カラッと揚げたてんぷらのうまさが相まって、絶妙の味わい。それにしても信州というのは、どうしてこんなにそばがうまいのだろうと、感心してしまう。

 第5湯目の、国道のわきの一軒宿、島温泉(入浴料500円)の湯に入ったあと、新道の湯原トンネルの手前を右手に入り、葛葉峠を登っていく。猫鼻温泉の露天風呂に入ろうとしたら、現在、休業中‥‥。朽ちかけた看板が寂しげだ。

 第6湯目は、長野県から新潟県に入ったところにある一軒宿の蒲原温泉(入浴料300円)。宿の湯につかったあとは、河原の天然露天風呂にも入った。

 蒲原温泉から葛葉峠へ。峠の茶屋の展望台に立ち、姫川の谷を見下ろした。

「おー、これぞ、フォッサマグナ!」

 と思わせるような姫川の谷間の風景だ。

 新道の大所トンネルが完成しているので、峠を越える車はほとんどなかった。

 第7湯目は、峠下の白馬温泉。「白馬観光ホテル」(入浴料500円)の湯に入る。

 第8湯目は、姫川を渡ったところにある姫川温泉。「ホテル国富」(入浴料800円)の露天風呂に入る。この姫川温泉は新潟県ではなく、長野県になる。

 こうしてフォッサマグナの温泉を総ナメにし、

「ヤッタゼー!」

 という、いいようのない満足感を味わった。

 最後に、糸魚川の市街地に近い糸魚川温泉「ひすいの湯」(入浴料1500円)という新しい温泉に入り、糸魚川の市街地へ、そして、姫川の河口に立った。